2025年11月12日、全国から派遣された自治体職員向けのセミナーとして開催された地域活性化センターの講義で、シジュウナナの取り組みを紹介する機会をいただいた。
登壇したのは、ブランドを運営する株式会社Weee 代表取締役・青柳慎さん(以下、青柳さん)と、デザイナーのアカリ※。
今回は、シジュウナナのブランドの成り立ち、デザインプロセス、そして「旅をしながら知り、感じ、描く」ものづくりについて語られた内容を、当日の登壇内容をもとにレポートしていく。
※デザイナーのアカリ…筆者スミレの従姉妹でもあり、旅仲間

シジュウナナは、日本の47都道府県を巡り、その土地の歴史・文化・風景をTシャツのデザインに落とし込むブランドだ。きっかけは、青柳さんが50歳を目前に「47都道府県へ営業で行ってきたのに、その土地の歴史や文化をほとんど知らなかった」と気づいたことだった。登壇中、青柳さんは「学びたかった。行きたかった。だから作った」と語っている。
そこで、信頼するデザイナーのアカリに「47都道府県それぞれのTシャツを作りたい」と相談し、旅をしながら制作するスタイルが始まった。街を調べ、訪れ、感じ、その上でデザインする――制作そのものが「日本を知る旅」となり、続けていくうちにTシャツは地域の人との会話のきっかけとなり、旅の目的となり、まだ知らなかった日本の魅力へ自然に導いてくれる存在になっていった。これが現在のシジュウナナのベースになっている。

ジュウナナの特徴は、机上のリサーチだけでデザインをつくらない点だ。シジュウナナメンバーそれぞれがひとり旅したり、アカリとスミレのふたり組で巡ることもある。現地の空気、街の表情、土地の人の話を直接体感しながらつくっていく。
東京モデルTシャツ制作では、アカリ自身も東京タワーをほとんど見たことがなかったことに気づき、昼夜で東京タワーを訪れて観察。その色調、シルエット、街の空気感を感じ取ったうえでデザインへ落とし込んだという。訪れたからこそ抱ける愛着が、デザインのインスピレーションになっているのだ。

Tシャツの大きな特徴は、刺繍のようで刺繍ではないという点だ。アカリが1本1本の線を手で描き、その立体感を再現できるよう発泡プリントの厚み・線幅・形状を試行錯誤しながら約1年かけて調整した。見た瞬間は刺繍のようだが、触れるとふっくらとしたプリントの質感。「街の魅力を服としてお洒落に着られるかたちで届ける」ために辿り着いた技法だ。

イベントの終盤、青柳さんの言葉が印象に残った。
「シジュウナナTシャツを制作すればするほど、その街の人と仲良くなれる。街を好きになる。それが嬉しい」「売れたら嬉しい。でもそれだけじゃ嫌だ。地域の面白さをちゃんと知りながら続けていきたい」
ブランドの核にあるのは、ビジネスよりも先にある「街を知ることができて嬉しい」「人と仲良くなれて嬉しい」という感情だ。47都道府県すべてを巡り、その地で出会う人と同じ景色を見て、学び、描き、Tシャツにする。旅は続いていく。
編集後記

ビジュアル制作会社にカメラマン兼オウンドメディア運用担当として勤務後、クックパッド株式会社にてカメラマン兼ライターとオウンドメディア運用を担当。現在、独立しビジュアル撮影をメインに活動中。

絵描きの祖父と衣装デザイナーの祖母の影響で幼少期から絵とファッションへの憧れを抱く。その後某服飾専門学校でデザインを学び首席で卒業。ファッションデザイナーの経験を得て、現在はイラストレーター、グラフィックデザイナーと、ファッション性を落とし込んだ幅広いデザイン領域で活動中。